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【視覚障がい者歩行支援アプリEye Navi】10月25日付朝日新聞デジタル版に掲載されました。

2025.10.27メディア掲載事例

10月25日付朝日新聞デジタル版にて弊社の取り組みが紹介されました。

朝日新聞デジタル版 「ワインバーに一人で行けた」全盲男性の喜び AIで進化した街歩き 視覚障害者の心強い「相棒」として、活用が広がっているスマホアプリがある。
AI(人工知能)が道路上の人や車、信号の色、電柱などを検知して音声で知らせながら道案内をしてくれるという。
愛用する男性と一緒に街を歩いた。
10月上旬の昼下がり、点字教室の講師の仕事から帰宅する吉住寛之さん(52)=福岡市早良区=と待ち合わせ、徒歩で10分ほどの地下鉄天神駅に向かった。
吉住さんがスマートフォンに耳を当てながら、アプリ「Eye Navi(アイナビ)」を起動させた。すると、周辺のコンビニや郵便局などが距離とともに次々と音声で伝えられた。
「こんなところにローソンができたんだ」。新たな発見にほおを緩める。
白杖(はくじょう)をつきながら点字ブロック上を歩く。
車道側にいた私の声につられ、通過する車に近づきそうになった。「危ない」と手を差しのべようとしたら、スッと体の向きを変えた。
誤って車道に出そうになってハッとすることも、自転車とぶつかって杖が折れることも珍しくないという。
「命を落とす危険は常に感じている。無目的に歩く『散歩』は視覚障害者にとって、夢のまた夢」と話す。
途中から吉住さんに腕を貸して歩道を進んだ。「車」「ポール」「人」「車止め」「信号は赤です」……。胸のポーチに入れたスマホのアイナビは前方に現れるものを次々と認識し、早口で伝える。
  「『正しい方向です』というアナウンスがあるので、安心します」
全盲になった当時は普及していなかった点字ブロックや音響式信号機は、時間をかけて整備されていった。
だが、信号の音を「騒音」という近隣住民の苦情で夜間・早朝は音が切られたり、車のハイブリッド化が進んでエンジン音で判断できなくなったりと、視覚障害者の不安は解消されていない。
今は母親と2人暮らし。自宅で鍼灸(しんきゅう)治療院を営むが、医療福祉専門学校や点字教室の講師を務め、一人で外出する機会は多い。
2年前の暮れ、知人の勧めでアイナビを使い始めた。飲み会に誘われれば駆けつけ、お気に入りのワインバーにもスムーズに行けるように。「酔っ払っても一人で無事に帰宅できる」とうれしかった。
東京への出張では、行きたかった初めての場所にも行けた。
早稲田のジャズ喫茶に浅草橋のそば屋……。「アイナビがなくても、通りすがりの人たちに尋ねながらたどり着くことはできるかもしれないが、そこまでしなくても、となる。アイナビが外出の後押しをしてくれる」と感謝する。
「盲導犬型ロボット」構想から始まった
開発したのは、コンピューターサイエンス研究所(北九州市八幡東区)。社長の林秀美さん(74)は、地図大手ゼンリンの元副社長で、地図のデジタル化やカーナビ事業を先頭に立って進めた。
「誰もがどこへでも自由に楽しく移動できる社会を実現する」という理念からアイナビは生まれた。
当初は視覚障害者に同行する「盲導犬型ロボット」にする構想。2015年に起業し、視覚障害者の声を聞きながら実証実験を重ねたが、技術的なハードルが高く、うまくいかなかった。
ところが、AIの進化で可能性が一気に広がった。車や自転車、信号など道路上に現れる優先度の高い20種類の目標物をAIに覚えさせて検知の精度を上げ、音声で知らせる仕組みを開発した。
視覚障害者の声に耳を傾け、細かい改良を実施。アドバイザーとして開発段階から関わる妹尾真由美さん(51)=北九州市小倉北区=は、全盲に近い弱視。「視覚障害者によって必要な機能もそれぞれ。世界中で使ってもらえるよう、いろんな人の意見を採り入れて、もっとみんなで良くしていきたい」と話す。
基本機能は無償「検知精度さらに高める」
厚生労働省によると、視覚障害者は障害者手帳を持っている人だけでも全国で約27万3千人いると推計される(22年度)。一方、国内で実働する盲導犬は10年度に1067頭だったのが、24年度は768頭まで減った(日本盲人社会福祉施設協議会調べ)。
アイナビは盲導犬と併用することも推奨している。23年のサービス開始からダウンロード数は3万3千を超えた。
ゼンリンなど企業の協賛金を得て、道案内や障害物の検出、歩行時の映像の自動保存といった基本機能を無償で提供する。
理念の実現には、まだ道半ば。進行方向に下りの段差がある時に認識しにくく、高層ビルの多い都市部でGPS(全地球測位システム)の位置情報に誤差が発生する。解消すべき課題は残る。スマホではなく、メガネや耳に装着する「アイカメラ」の形にしてほしいという声にも応えたいという。
林さんは「視覚障害の人たちの助けになるために始めた事業。無償提供を続ける努力をしながら、検知する精度をさらに高め、生活が豊かになる機能も増やしていきたい」と話している。
この記事を書いた人:波多野大介 西部報道センター
朝日新聞デジタル版より一部抜粋

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